記事

マインドフルネス エンカウンター グループのすすめ
(Mindfulness Encounter Group)

マインドフルネス エンカウンター グループでは、今、この瞬間 (here and now) に自分が体験していることに対して目覚めているようにします。日常の意識活動はあたかも自動反応のように起こっています。たとえば、何か物を見るといった感覚器官への刺激があると、心の中では直ちに、それに対する照合・分類が始まり、認識し、判断し、次の行動のための戦略を考えたり、連想したりします。このように心はいつのまにか最初のきっかけとは関係のないところを駆け巡っているのです。そして、望んでもいないのに心配や苦悩するようになっ たりもします。

意識がとどまることなく勝手に迷走しているのです。こころを暴走させないようにし、心を自由自在に使うことができるようになると、もっと楽な人生を送ることができます。自分の意識の動きを感知しながら、勝手に走らせるのではなく、自在に使っていくのです。同時に、他の人の心の内容をも感知するようにします。さらには、周りの環境で起こっている事象が持っている深遠な意味や情緒すらも感知するようにします。それを感知できるように心の状態を整えることをマインドフルネスの状態になるといいます。

方法

参加人数は10人ほどが適当です。経験をつんだ人が世話人 (Facilitator) になります。全員が円陣を組んで座り、まずは瞑想するような気持ちで心を落ちつけます。マインドフルネスの状態、すなわち、今この瞬間に起こっているすべてのこと、情緒、体感、イメージ、思考、周辺の出来事などを感知できる心の状態を維持します。

自分の心を感知する

今、自分にどのような情緒が起こっているのか感知します。だいたい、情緒というのは外界から触発されて起きます。たとえば、友人がちょっとおしゃれをしてきたとします。あなたは、その人を見たときなんらかの情動を経験するはずです。それを逃がさないようにします。おしゃれをしてきたのだから、きっと、ひとに気持ちのいい印象を与えるものでしょう。

(う〜ん。花子さん。きょうはなんか違うな。新鮮な感じを受けるぞ ... )といったぐあいでしょうね。

あるいは、誰かが次のような発言をしたとします。

「あんたは、約束を守らないよ。」

このような発言を聞いたら、たぶん否定的な反応をすることでしょう。瞬時に腹が立ったらそれを感知します。

(おっ。いま腹が立ってるぞ。)

この時の怒りの情緒を逃さないようにするのです。つまり、自分は腹が立っているのだということに気がつくようにします。

ところが、反射的に次のように言い返したりします。

「なんてことを言うんだ。いつ、約束を守らなかったんだよ。」

このとき、起こったことをもう少し詳しくたどってみましょう。

  1. 「あんたは、約束を守らないよ」という音を聞いた。
  2. 「あんた」とは自分のことだ。
  3. 「約束を守らない」ということはよくないことだ。
  4. 私がよくないことをしていると言っているのだ。
  5. 私はよくないことをする人間だとは思われたくない。
  6. 実際、わたしはいい人間であろうと常日頃努力している。
  7. このままだと、私はよくない人間ということになってしまう。
  8. わたしの常日頃の努力が無視されてしまう。
  9. この発言は、私の意図に反して破壊的だ。
  10. そんなことを言う相手はとんでもないやつだ。
  11. 腹が立つ。
  12. 訂正させなければならない。
  13. それも、その発言はは重大な問題だということを知らしめる方法で訂正を迫らなければならない。
  14. よし、きつい言葉を選択しよう。
  15. 大声で話そう。

こうした思考が、超高速で展開されたのです。あまりにも早いために、本人も気が付かないほどです。そして、行き着くところは嫌悪と罵倒の修羅場だったりします。心の反応は自動的で無意識的です。"この瞬間"に目覚めていなければ、こうしたパターンから抜け出すことができません。

まず、心の自動迷走を防止する必要があります。その方法は情緒を感知することです。情緒は言動の背後に常に存在しています。反論しようとするときにも、。「腹が立つ」という情緒は続いています。その自分の「腹が立つ」という情緒に気がつき意識化すると、そこに至った意識の流れを逆にたどることができるようになります。マインドフルネス エンカウンター グループでは微細な自分の心を感知するようにします。

自分の心を表現する

ところで、マインドフルネス エンカウンター グループの場では、上の例のように相手を攻撃するようなことはまず起こりません。 ノンバイオレンス (Non-violence = 非暴力)  が原則ですから。誰かに、本人の了解なしに、また、何らかのサポートなしに痛みを感じさせるようなことはしません。攻撃しません。要求しません。追求しません。指摘しません。批評しません。では、さきのように「あんたは、約束をまもらないよ」と言いたくなったらどうしたらいいのでしょうか。そんなときは、そのような衝動を持つ自分の情緒を表現するようにします。おそらく、怒りとか不快感があるから、そんな強い言葉を選択して表現しようとしたのでしょう。そ うすると、次のように表現することができます。

「あなたがこの間、約束を守らなかったので不快です。」

これは、相手を攻撃しているのではありません。自分の気持ちを表現しているです。今、自分に起こっている情緒を表現します。自分の考えではなく、この瞬間の情緒です。正直にありのままを表現するのです。ところが次のような "You are …"式の糾弾するメッセージが出てしまうということは、目覚めていないという証拠です。

「あんたは約束を守らない。」
「あんたこそなんだよ。」

感じを通り過ぎて考えが起こり、行動に移ってしまっているのです。相手を攻撃するような表現は、直接的な自分の気持ちを表現しているのではなく、自分の気持ちを自覚しないままに、思考が走り、戦略を練り、行動にでてしまったのです。こういった行動は通常、パターン化しており、その人の人生にくり返し起こってくるようになります。

おしゃれをしてきた花子さんを見たら、

「そのブローチきれいだね。よく似合ってるよ。」

花子さんは、きっといい気分になるはずです。誰かにみとめられたいという自分の意図が成就したからです。ここで、(わたしも、むかし似たようなの持っていた。5年前だったかなぁ)とか、(どこであのブローチ買ったんだろう。私なら、別の色を買う)とかいうふうに、勝手に意識を走らせないでください。

ブローチの例のようにマインドフルネス エンカウンター グループでは、むしろ相手のいいところを見つけては、表現するように努めます。すくなくとも、一緒にエンカウンターを始めたくらいですから基本的には好感を抱いているはずです。99 %の好感を持っているにもかかわらず、残り 1 %の不和だけをことさらに取り上げて表現するものではありません。その 1 %のゆえに自分が不便を感じるとしたら、99 %の好感を十分に表現しておいてから、その自分の不快感を表現するとよいでしょう。

「あなたと一緒にいると、いつも話題が豊富になって楽しいです。」
「だけど、この間、約束を守ってくれなかったことについては、悲しい気持ちがあります。」

自分に起こっている情緒を "I"メッセージで率直に表現します。 

「あなたの端正な姿を見て、気もちよくなった。」
「そのような、あなたの発言を聞いて非常に悲しい。」
「あなたが楽しそうなので、うれしい。」

といったぐあいに、"I feel …"式の直接的な感情を表現します。

誤解のないようにしていただきたいのは、相手をおだてるのがノンバイオレンスではないということです。ただ、自分の気持ちを正直に表現しさえすればいいのです。また、「それはよくないと感じます」というのは、情緒ではなく考えを表現しているのです。その発言の背後には、「腹が立つ」とか「悲しい」とかの情緒があるかも知れません。それをそのまま「腹が立つ」とか「悲しい」というように表現するのです。そのような情緒を持つようになった理由については、必要がある場合に付け加えればいいのです。多くの人は自分の情緒と考えを混同しています。それを区別できないということは、その瞬間に目覚めていないということです。いい気持ちを感知したら、それを逃さずにそのまま積極的に表現しましょうということです。

話し手の心を感知する

だれかが発言しているときには、自分の思考はいったん停止させておいて、その話し手の意識世界に入っていくようにします。その話の内容は傾聴し尊重もしますが、同時に話し手に起こっている情緒を感知するようにします。このとき、話を聞きながらも自分の次の発言を準備し、その人が話し終わるや否や、あるいは話している途中に自分の話を切り出すというのは、自分の思考が勝手に走っているからです。マインドフルネス エンカウンター グループのルールは情緒を感知し表現することであって、意見を表現するのではありません。 相手の心を感知するには、自己の思考活動を停止させて無我になることです。

相手の心を感知するには、相手の様子をしっかりとトラッキングする必要があります。話し方、身ぶり手ぶり、顔色、表情などをよく観察します。また、大きくはその「場」の心を感知するようにします。今話している人をはじめ、聞いている自分や他の人がその場を形成しています。そして、ダイナミックな無意識世界を形成しています。そのような無意識からのメッセージを感知できるかも知れません。マインドフルネスとは、今体験しているすべてをトラッキングすることです。外的には、その部屋の温度、音、空気、出来事、その他の人々をトラッキングします。内的には、自分自身が今まさに体験していることに気づいているようにします。体のどこかがかゆくなったり、突然、過去の記憶が浮かんできたり、イメージが浮かんできたりするかも知れません。ただし、それらにとらわれないようにしてください。次の「共感したことを表明する」までは、いま話している人がその時空間の場で重要な役割を果たしているのだということを尊重しましょう。

共感したことを表明する

相手の情緒を感知したら、それを表明します。

「いま、ハッピーなのね。」
「そのような悲しみをもっているのですねぇ。」
「わたしに腹が立っているのですねぇ。」
「あなたの気持ちはよくわかりますよ。わたしも、似たような経験がありますから。」

ここで、また理解しておくべきことは、「共感」と「同意」とは異なるということです。共感したからといって、同意したわけではありません。共感とは、相手の情緒を自分の感受能力でもって理解できたということです。一方、同感は自分も同じ意見であるということです。同感には概念化、価値判断が入っており、マインドフルネス エンカウンター グループでの主たる関心事ではありません。ですから、話の主題の結論を探す必要もありません。情緒を感知する道具としての役割を果たしたら、ページをめくるように主題を変えてしまいます。

共感したことを表明するという手順は、相手の心に向けられた積極的な行為であり、相手に対する慈悲心を持つということにもなります。実際、共感の表明を受けた相手の心には"自分の気持ちが理解された"という大きな安堵が生まれることでしょう。これにより、話し手は自分のこの時空間での役割をひとまず手放してもいいという満足感を得ることでしょう。

そして、自分の心を表現する

相手の情緒を理解し、共感したことを表明したら、次には、自分の情緒を率直に表現する番です。

「話を聞いて、わたしもうれしいです。」
「わたしも悲しくなります。」

「I」メッセージで表現することをお忘れなく。でないと、あもわず相手に反論してしまう言葉になるかもしれません。

「なに言ってんのよ。」
「そうじゃないでしょ。あんた、まちがってるよ。」

重ねて、申します。「you」メッセージを使ってしまうと、あなたは目覚めていないということです。あなたのマインドは「判断」「戦略」「行動」のプロセスと無意識的に突っ走ったのです。

展開

マインドフルネス エンカウンター グループはいろいろな意識を実験し、体験する場でもあります。さまざまな状況が考えられます。

1) 相手の話の内容とその人の情緒が矛盾する

たとえば次のような発言を聞いたとします。

「あなたの忠告を聞いてうれしいです。」

しかし、このように言いながらも、表情が硬くなっていたとしたら、それは発言内容と情緒が一致していないという証拠です。こんなときには、発言している本人にも気がつかない情緒に共感するようにするのです。

「人の忠告を受け入れるのは難しいことですよね。あなたの心の葛藤が感じられますよ。」

このように、相手のプラス(よい)面を見るようにします。次のように言ったりしたら、慈悲のある態度とはいえません。

「あんたの"うれしい"などという言葉は信じられませんね。」

2) 相手が無意識的な何かの意図をもって発言する

「あんたなんかきらいよ。」

この発言には、聞く人である "私と議論がしたい"、 "私の注目を引きたい"、 "私の心をいためつけたい" といった意図がありえます。そのような、意図をもつようになった情緒に共感するようにします。

「わたしに腹が立っているようですね。」

3) 三拍子で処理

また、非難されたときは、次のような処理ができると心を暴走させることがありません。

  1. ステップ1:ふぅ〜ん、そういうふうなんだなぁ。
  2. ステップ2:そうなる、何かの事情があるんだろう。
  3. ステップ3:それよりも悪い状態ではないのだから、感謝しよう。

たとえば、誰かが「あなたは、約束を守らない」と言った場合です。
まず、『「あなたは、約束を守らない。」と言うのだなぁ。』(ステップ1) と素直に判断を交えないで聞き取ります。事物をそのままいったん受け入れることにし、まったく、概念化しないのです。そして、「そのように言う事情があるんだろう。」(ステップ2) と考えます。実際、次のような事情が考えられるでしょう。

なにか、誤解されるいきさつがある。
記憶にないが、そんなことがあったのかもしれない。
前世で人を批判して苦しめた。
自分の人格の成長が求められている。
相手の人が成長するための援助に使われている。

予測できない場からのメッセージが現れてこようとしている。

そして、「なぐられないだけ、ましだ。ああ、ありがたい。」(ステップ3)

このように、ステップを踏みながら一つの言葉を受け取ると、「ああ、まことに申し訳ない。そのように考えさせる私の落ち度があるのですね。私の成長のためを考えてくれるとは、ありがたいことだ」と誠実にお礼が言えるようになります。その後に、自分の考えや、別のフィーリングを表現するのがふさわしい場合はそうします。

このような処理は、心の暴走がなく、目覚めた状況でないとできません。このパターンのコントロールが自然に行えるようになる、つまり、人格化すると、仏陀のようになったといえるでしょう。

4) マイナス感情を十分に味わう

どんな事情にせよ、少なくとも、自分に起こったマイナス感情は、こころの自動反応、暴走による結果です。まずは、そのマイナス感情を十分に味わいます。いったん、受容します。起こってきたマイナス感情を(自分は人格者だから)などと考えて押し殺してしまってはいけません。それは、せっかく気がつきかけた自分の癖を再び無意識の中に抑圧してしまうようなものです。許されるならばなるべく長く、その情緒を維持し、お風呂を使うようにじっくりと浸ります。意図的にその情緒を味わうのです。相手の発言を受けて、自分の心に微細な「反発する不快感」を感じたとすれば、その不快感をじっくりと味わいます。

5) 遊んでみる

また、遊び心を持って実験をしてみるのいいでしょう。参加者の間で十分な信頼関係が醸成されているならば、いろいろな奇抜なことをすることができます。たとえば、その時の情緒を増幅してみるといったことです。起こってきた感情を意図的に増幅して体全体で表現したり、大声を張り上げたりします。

「バカを言うな。そういうあんたはなんだってんだ。」

立ち上がって、大げさに振舞うのです。あくまでもマインドフルネスな状況を維持しながら。こうすることにより、自分自身気がつかなかった、無意識からの意外なメッセージを得ることができこともあります。幼い時の記憶がよみがえってきたりして、気づきを与えてくれます。あるいは、スカッとして、今後同じ状況にあっても気楽な気分でいられるようになったりします。心を自動反応させる何らかの深層意識の要素がなくなってしまったりすることもあるのです。

このように意図的に"遊んでみる"ような作業も.目覚めていなければできないことです。このとき、"参加者の間で十分な信頼関係が醸成されている"ということは極めて大事です。それなしに行うとバイオレンス、暴力的行為です。相手の意志に反することを強要するのはすべてバイオレンスです。マインドフルネス エンカウンター グループはノンバイオレンスです。

6) 相手の許可をもらって、別の実験をすることもできます。マインドフルネスの状態にあることを確認して、なにか言葉をやさしく投げかけてみるのです。

「あるがままの自分でいいんですよ。」

このような試みの言葉 (probe) が、ひょっとして相手の無意識に何か大きな反応を引き起こすかもしれません。気づきが起こるかもしれません。

 

どのような意識もそれに流されるのではなく、反対にその流れを処理できるのだということを知ります。怒っていても、その怒りは自分自身ではありません。泣いていてもその悲しみは自分自身ではありません。ただ、そのような情緒に自分をゆだねることを許すか、あるいは、そこから抜け出すか、自分で決めることができます。カッと血気して、言い返したりするのは、深層意識に何かがあるのです。お釈迦様のような、いわば、業のない人間ならば、「ほう、あの人は"わたしが約束を守らない人間だ"と考えるの だなぁ。」と反応し、カッときたりはしません。自分に相手の発言と呼応する要素がない場合は、カッとこないのです。マインドフルネスを身につけると、心が自動的に暴走することがなくなります。以前なら血気したであろう状況に直面したりしても、不思議に平安な気持ちでいられます。自分が霊的に一段成長したのです。ある参加者は、エンカウンターには命がけで望むと言ってます。今日、この部屋を出ていくときは、入ってきたときの自分とは異なっているということを体験しましょう。

まとめ

「自分のこころに向けるマインドフルネス」、「相手のこころに向けるマインドフルネス」を繰り返すのがマインドフルネス エンカウンター グループです。それは、慈愛を持って喜怒哀楽を遊ぶ場です。人生のいかなる行為にも"痛み"や "憎しみ"が付いてくる必要がありません。正しく思考し、慈愛をもって行為するところには喜びがあり、その変幻自在な展開が生きるということではないでしょうか。マインドフルネス エンカウンター グループは、そのように喜びをもって世界で遊ぶための実験場なのです。

マインドフルネス エンカウンター グループでは気づきが起こります。霊的成長が起こります。自分の意識世界の極めて微細な出来事をもそのまま感知、理解できるようになりましょう。この瞬間にひらめく極微の意識は、まさしく自分にとっての宇宙創造の瞬間です。無から有へ、無形から有形へ向かう、存在の波立ちに気づくこと、それが覚醒ではないでしょうか。これを極めると宇宙の実相すら感知することができるでしょう。

 

心構え

マインドフルネス エンカウンター グループでは互いに信頼し、安心できる関係を維持する必要があります。そのような中でこそ、起きてくる体験や情緒を共有することができるのです。

慈悲心を持つ
慈悲心を持ち、一人ひとりの存在自体を尊重し喜ぶ心を持って臨みます。そして、全員がそのように臨んでいるのだという確信を持ちます。
ノンバイオレンス
相手を批判したり攻撃したりしません。いやなことを強要しません。場は議論するところではなく、情緒を交換するところです。
守秘義務
場で起こったことは、会員以外には話さない。
参画意識
場の進化に参画する積極的姿勢が必要です。場で起こったことは自分にとっても、全体にとって必要なプロセスであると認識します。軽い気持ちで欠席しないようにします。